レム・コールハースのドバイ

建築家、レム・コールハースがドバイに計画中のOMA studioの全貌が、3Dモデリングのパースと共に公開された。OMAのlyad Alsakaによれば、主なコンセプトは「内と外の境界を無くすこと」で、大きな可動式の壁が特徴。大規模な展覧会や会議などに対応しているという。オープンは今秋とのこと。(ArtReviewから抜粋。筆者訳)

ArtReview記事
http://artreview.com/news/news_21_mar_2016_rem_koolhaas_oma_to_build_alserkal_avenue_space/

ArtNet記事(こちらにはパースの画像が多数掲載されている)
https://news.artnet.com/art-world/rem-koolhaass-dubai-project-unveiled-452102?utm_content=bufferedd2c&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=socialmedia

コールハースが提唱する概念のひとつに「ジェネリック・シティ」というものがある。これは、アイデンティティから開放された、西洋近代的な中心―周縁的に広がる都市ではなく、脱中心的な都市間のジェネリック=コピーとしてのシミュラークルとも言いかえることが出来る。それまでの都市文脈から切り離される、社会学で言う「フラット化」という意味においては筆者は多少の抵抗があるが、ドバイのように潤沢なオイルマネーにより新たに都市計画が行われる地域では、そのような建築家の構想/思想が表現しやすいという利点もある。彼はそれが「歴史のない街」だからこそ可能としている。

「〔…〕ここが最大規模の都市製造の場所であり、また、かつて(都市として)何もなかった地域であることから、湾岸地帯は純粋形態の現代都市を本質的に表徴していると言える。」(レム・コールハース『S, M, L, XL+』、ちくま学芸文庫、2015)

「〔…〕都市はもはや強度を上げるのではなく、人を癒やし、リラックスさせるためにつくられている。都市増殖の究極的カテゴリーになったのが、リゾートだ。厳格性の美学たる軸線は有機性の美学に、幾何学の美学は曖昧性の美学に打ち負かされた……。ものを区別するのに唯一有効な手段はテーマである。「規則性」「実用性」「ユートピア的」の未来は、テーマとしてのみあり得る。」(同書)

内と外との境界線が溶解する時、平滑平面上の緩やかな欲望がアヴェニューを流れることになるのだろう。

また、テーマ化されたドバイという街全体に、確かにユートピアの感覚を抱く。想像の世界――ラカンで言う想像界は書き換え可能なのだから、ゼロからつくり上げられた都市、また建築物はひとつの想像の中の蜃気楼のように、遠い国に、しかし確かに存在している。


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