ジョルジョ・デ・キリコの影




《占い師の報酬》1913、フィラデルフィア美術館蔵




《古代的な純愛の詩》1970、パリ市立近代美術館蔵



一昨年の年末に開催された展覧会「ジョルジョ・デ・キリコ――変遷と回帰」を思い出していた。

「形而上絵画」と呼ばれる彼の画風は、現実に対する不安や恐怖からの逃避先としての非現実的世界、夢やノスタルジーへの通路として読むことが出来る。絵画内に、やはり非現実的に配置される物や建築は、のちのシュルレアリズムにおける先駆的な表現手法で、サルバドール・ダリなどにも影響を与えたとされる。しかしそれを牽引したアンドレ・ブルトンとは決別をし、独自の表現を探求することになる。

アイソノメトリック、アクソノメトリックなどが混在し、V.Pを意図的に崩壊させる。そして、ランダムに置かれるモチーフ達。つまり、このような世界の中では何でも書き加えることが出来る。勿論、影も。
おそらく、影がなければ、彼の絵画が深みを増すことはなかっただろうし、観る者の心情を代弁することもないだろう。光あるところに影あり。日が高く上るほど、影は短くなる。

そういえば以前住んでいた街に、Hide and Seekというバーがあって、その看板のモチーフに、《通りの神秘と憂鬱》が使われていた。少し懐かしくなった。

展覧会「ジョルジョ・デ・キリコ――変遷と回帰」に《占い師の報酬》は出展されていません。 
参照:(http://campingcar.blog.hobidas.com/archives/article/87766.html)

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