空っぽの酒場





夜道に浮かぶ自販機の蛍光灯

それを通り過ぎ、気霜の吐く息とともに

戦いに敗れし者たちの集う

とある酒場へ辿り着く

凛烈たる外気とは裏腹

客同士は 今日一日分の鬱憤を晴らすがごとく騒ぎ立ている

ステンレスの灰皿は予想通り軽い音をたて

立ち昇る煙をただただ目で追っている

黄ばんだテレビから 

音は 次第に落ちるように消え始め

周囲のざわめきは 心の奥で静かになり

耳鳴りは遠ざかり

最後に残るのは 戦禍の余韻と思索の燃殻



果たせなかった約束は宙ぶらりんのまま

実存はほつれ始める

空疎な伝言ゲームにももう飽きた

静止した魂をあざ笑うように進む 

時計の秒針

反駁する死へと向かう言葉たち



そんなもどかしさを金色の液体で洗い流し

私は店をあとにした



嗚呼、雪はどうしてこうも降り続けるのか

もう疲れてしまった





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